先日、社員が退職届を持ってきたのですが、全文をパソコンで作成、それを印刷して、名前のところに認印が押印されているものでした。

会社としては直筆の方が良いような気がしますが、完全にパソコンで作成されたもので良いのでしょうか?

また、始末書の提出でも同じ疑問があります。

社員から提出される書類が、全文パソコン打ちで良いかどうかは、ケースによって異なります。

ただし、どのような場面でも直筆の書類の方が会社としては効果が高く、望ましいのは間違いありません。

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当事務所でも、たまに今回のような質問を受けるケースがあります。

 

突然電話がかかってきて、このように聞かれることが多いです。

 

「社員が退職届を全文パソコンで作成したものを印刷して押印されてるんです。これって大丈夫ですか?」

 

この質問に対する回答は、その社員と会社の間に争いがあるかどうかによって変わってきます。

 

争いが無い場合

その社員と会社の間に「退職すること」、「退職日」、「退職理由」に争いが無い場合は、多くのケースでは全文パソコン打ちでも問題の無いことが多いです。

 

そもそも、会社として退職届を受け取った方が良い理由としては、社員の辞める意思、辞める理由、辞める日を確認することと、後日何か起きたときにこれらを証明できることです。

 

でも、そもそも争いが無いのであれば、将来的にトラブルになるリスクはほとんどありません。

 

それであれば、全文パソコン打ちの退職届であろうが、書類として法的効果はりますし、離職票の発行時にハローワークに提出する書類としても使えるので問題が無いという回答となります。

 

争いがある場合

では、その社員と会社の間に「退職すること」、「退職日」、「退職理由」などに争いがある場合はどうでしょうか?

 

これも状況によるのですが、例えば次のような場合は直筆の方が良いです。

 

  • 7月28日に社員が7月31日で退職したいと会社に口頭で伝えてきた
  • 会社としては3日後に辞めるなんて困るし、就業規則にも反するので約1か月後の8月31日で退職として欲しいと伝えた
  • 話合いの結果、社員はしぶしぶ了承して8月31日付での退職届を提出した

 

この例は、退職日で若干の争いがあったわけですが、最後はしぶしぶ了承して退職届を提出したというケースです。

 

この場合、もし退職届の全文がパソコン打ちだったらどうでしょう?

 

もしかすると、あとから社員の気が変わって

 

「私は最初から7月31日付の退職だと言っていた。」

「そんな退職届を出した覚えはない。会社が作ったものではないか。」

 

と主張される可能性がありますし、実際にそういう人を見たことがあります。

 

そのため、上記のような争いのあるケースで全文がパソコン打ちの退職届を提出してきた場合、次のようにすることをお勧めしています

 

それは、退職届の最後の部分に自署による署名をしてもらうことです。

 

例を挙げると以下のような形です。

taisyokusyomei
例文

 

直筆による署名が入るわけですから、これで「この書類は会社が作ったものではないか」とは主張しにくくなるのです。

 

始末書や顛末書でも、署名は直筆

それでは、始末書や顛末書を提出してもらう時はどうでしょうか?

 

 

始末書や顛末書ともなると、本文は長文になりがちです。

そうなると、本文まで直筆というのはちょっと酷です。

 

 

そのため、始末書や顛末書については本文はパソコン打ちでも構わないと考えています。

 

 

しかし、最後の部分については直筆で署名と押印をしてもらうべきです。

 

 

そうしないと、また後になって「それは私が提出したものではない」と主張されてしまう恐れがあるからです。

 

 

もし、社員が提出してきた始末書や顛末書が全文パソコン打ちの場合は、上記と同様に直筆の署名を入れてもらいましょう。

 

 

それが、後々のトラブルを回避するコツです。