就業規則福岡当社では、遅刻を3回すると1日欠勤したとみなして、1日分の給料を減額するルールがあり、ずっとこのルールで運用していました。

しかし先日、ある従業員からこのルールは違法ではないかという意見が出ました。

会社としては、問題ないという認識ですが、実際のところ違法になるのでしょうか?

就業規則福岡ご質問のケースでは、「単純に遅刻3回を欠勤1回」という取り扱いは違法である可能性が高いです。

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遅刻に関する給与の取り扱いを考える際には、まず区別しなければいけない点があります。

 

それは、以下の2つです。

1.遅刻したことにより、勤務していない時間の給料を控除すること
例えば、2時間遅刻してきた場合に、働いていない2時間分の給料を控除することは、全く問題ありません。
これは、罰則としての減給ではなく、ノーワークノーペイの原則に従って、働いていない分を払わないだけなので、法律上問題はありません。

 

2.遅刻を繰り返すことに対して、罰則として給料を減給すること
例えば、遅刻を何度か繰り返す社員に対して、就業規則に定めることにより、罰則として一定金額を給料から差し引くこと。
この差し引く金額は、1回の罰則について平均賃金の1日分の50%まで、更に罰則の総額が1ヶ月の給料の10%までという制限があります。

 

上記2つの区別ができたと思いますので例を挙げて解説します。

 

前提条件

1日の所定労働時間 8時間
1週間の所定労働時間 40時間
1ヶ月の労働日数 20日
月給額 30万円
1日あたり 1万5000円
1時間あたり 1875円
平均賃金1日分 1万円

 

・1時間の遅刻を3回した場合

遅刻により、合計で3時間は働いていないので、3時間分(5625円)の給料を差し引くのは当然大丈夫です。

 

しかしこの状況で、遅刻3回を1日の欠勤にしようとすると、あと9375円を罰則として引かなければなりません。

 

その場合、平均賃金1日分の50%を大きく超えてしまうため、この罰則としての減給処分は違法となります。

 

そのため、1回1時間程度の遅刻を3回したからと言って、欠勤1日とみなすことはできないことになります。

 

・それでは、遅刻1回について罰則の減給をしては?

それでは、「遅刻1回について、上記の例で言うと法律ギリギリの5000円を減給すればいいじゃないか!」とこういう発想が出てきます。

 

しかし、短時間の遅刻1回で罰則としての減給処分ができるのかどうかという問題があります。

 

なぜなら、上記の取り扱いは労働契約法により懲戒権の乱用となり、無効となる可能性が非常に高いからです。

 

・遅刻に対しては、他の方法で対処することが大切

結局のところ、遅刻に対しては減給など給料の控除によって対処するのは限界があります。

 

遅刻の事実があれば、それをしっかり記録として残し、本人にしっかりと指導し、それでも改善しないようであれば、始末書を取って事実を残しつつ改善方法を考えさせる。

 

それでも改善しなければ、就業規則に基づく「けん責処分」、「減給処分」、「出勤停止」、「普通解雇」、「懲戒解雇」の順番で対処していくことになります。

 

就業規則を整備したうえで、正しい手順さえ踏んで、それでも改善しなければ、最終的には解雇という流れです。

 

あまりに遅刻がひどい場合、他の社員にも悪影響ですので、どうしても改善しない場合は、解雇も仕方ないと考えます。

※解雇の場合は、正しい手順を踏むことをお忘れなく