7月10日がボーナスの支給日なのですが、私は6月30日に自己都合で退職することになりました。

ボーナスの算定期間は在職しているので、私もボーナスが貰えると思っていたのですが、会社に確認したところ、「支給日に在籍していないのでボーナスは支給されません」と言われました。

これは違法ではないのでしょうか?

基本的に、就業規則等で「ボーナスの支給日に在籍していること」が要件として定められている場合は、ボーナスは支給されず、違法ではないと考えられます。

定めが無い場合は、労使慣行などを総合的に考慮して判断されると考えられます。

もっと詳しく

社員側の考えからすると、毎月の給与もボーナスも、どちらも同じ賃金としてとらえていると思います。

 

ですがこの2つは法律上、全く異なる物であって、その取扱いがずいぶん違います。

 

毎月の給料であれば、働いた日に対する報酬として支払うのは会社の義務です。

 

しかし、ボーナスは違います。

そもそも法律上もその支給自体が任意となっているんです。(労働基準法第89条4号)

 

また、裁判例でもボーナスについて次のように言われています。

賞与は「労務提供があれば使用者からその対価として必ず支払われる雇用契約上の本来的債務(賃金)とは異なり(~中略~)賞与を支給するか否か、支給するとして如何なる条件のもとで支払うかはすべて当事者聞の特別の約定(ないしは就業規則等)によって定まるというべきである」(梶鋳造所事件 名古屋地裁判決 昭55.10.8)。

 

ちょっと分かりにくいかもしれないので、翻訳するとこうなります。

毎月の給料とは異なって、ボーナスを出すかどうか、出すとしてもどんな条件で出すかは、就業規則や雇用契約などによって決まるというべきである。

つまり、ボーナスをどんな条件で支払うかは、労働契約で決まります。

 

そして、どんな条件を定めるかというのも給料などと違って、比較的自由に決めることができるとされています。

 

ということは、例えば就業規則でボーナスの支給条件に「ボーナスの支給日に在籍していること」と書かれている場合は、これが有効だと考えられるということです。

 

つまりこの場合は、ボーナス支給日前に退職していたらボーナスはもらえないということになります。

 

決まりが無い場合は?

では、就業規則などで決まりが無い場合はどうなるでしょうか?

 

その場合は、少し判断が難しくなります。

 

もし、「支給日に在籍している人だけにボーナスが支払われている」という慣行があった場合は、それが有効である可能性が高いです。

 

しかし、就業規則などでも定めがなく、上記のような労使慣行もなく、急に「ボーナス支給日に在籍してないなら払わない!」と会社が言い出した場合は、無効となる可能性も十分にあると考えられます。

 

今回のポイント

  • 就業規則でボーナスの支給条件に「ボーナスの支給日に在籍していること」と書かれている場合は、これが有効だと考えられる。
  • 労使慣行があった場合、これも有効だと考えられる。
  • それらが無い場合は無効の可能性もある。

※その他、ボーナス支給日の在籍要件を認めた判例

大和銀行事件(最高裁一小判決 昭和54.10.7)、神戸タクシー事件(神戸地裁判決 平成元.3.27)、堺市畜産農業協同組合事件(大阪地裁判決 平成10.1.30)など